期待通りの人を採用できないのは面接官が無能だから……というより、
そもそも「見えている情報」が「違う世界の情報」なんです。
職務経歴書や面接で見えているもの
職務経歴書や面接で見えているのは、基本こういうものです。
- 過去に何をやったか(結果)
- どんな環境にいたか(会社・肩書・年数)
- どの評価軸で評価されてきたか
つまり、
「その環境・その前提で、その役割を果たせたか」。
でも採用後の現場はだいたいこう。
- 前提が変わる
- 役割が曖昧
- 正解がない
- 評価軸も揺れる
つまり完全な別ゲームです。
ここを無視すると再現率が落ちるのは当然の結果です。
採用で本当に見たいのは「思考の置き場の操作力」
採用で本当に当たりを引く人は、だいたいこの条件を満たします。
- 地頭は「十分」以上(突出してなくていい)
- 思考の置き場を状況に応じて切り替えられる
- 正解がなくても動ける
- 自分で評価軸を仮置きできる
ところがこれ、
職務経歴書でも、想定問答でも、IQテストでも見えにくい。
だから期待通りにならない問題が発生します。
面接で見るべきものを2つに分ける
「地頭 × 思考の置き場」を分けて見ると採用の精度が上がります。
① 地頭(最低限の足切り)
- 読解力はあるか
- 会話の前提を掴めるか
- 質問に対して論点を外さないか
これは従来の面接や学歴でもある程度見えます。
地頭が良い人が強く見えるのは、理由があります。
地頭が良い人は、以下のような特徴がある(思考のエンジン性能が高い)です。
- 前提を素早く理解できる
- 抽象化ができる
- ルールを内部モデルとして持てる
- 状況が変わっても再構築できる
だから、
- 新しい業界でも伸びる
- 未経験でも吸収が早い
- 会話が噛み合いやすい
ただし、地頭は万能ではありません。
地頭が良い人でも外すケースも、だいたい同じ傾向があります。
- 思考の置き場が「正解探し」に固定されている
- 評価されない環境で迷子になる
- 権限・責任・目的が曖昧だと動けない
- 感情・人間関係をノイズとして切り捨てる
つまり、
思考の置き場を
自分で動かす訓練をしていない。
学校や大企業で評価されてきた人ほど、
この罠にハマりやすい傾向があります。
② 思考の置き場(ここが盲点)
ここが本丸です。
同じ質問でも、返答の中身じゃなくて、
思考の操作のしかたが出ます。
- 問題をどこに置くか
- 責任の所在をどう捉えるか
- 感情と構造を分けて話せるか
- 前提がズレたときの立て直し方
たとえば、「前職で一番困った判断は何でしたか?」という質問対して、
- 結果や正解を語る人
- 上司・会社のせいにする人
- 感情だけを語る人
は、思考の置き場が外在化している。
一方、
- 前提のズレ
- 制度や役割の欠陥
- 自分の判断ポイント
を語れる人は、かなり再現性が高い結果をもたらしてくれます。
つまり、採用で外れやすいのは、
「経歴」も「地頭」も悪いからではなく、
正解のない現場で必要な能力(置き場の操作)が、見えにくいからといえます。
採用試験を設計するなら
上記を踏まえて採用試験を設計するなら、実務的にはこんな感じになると思います。
- 知識テスト → 不要(すぐ陳腐化)
- IQテスト → 足切り用には有効
- ケース面接 → やり方次第
重要なのは、
「正解のない問い」を出して、思考の置き方を見ること
しかも、
- 評価基準を明示しない
- 少し前提を揺らす
- 感情が絡む設定にする
すると、
- 地頭はいいが固まる人
- 思考の置き場を動かせる人
がはっきり分かれます。
- 職務経歴は「過去の環境適応」
- 地頭は「思考エンジン」
- 本当に効くのは
思考の置き場を自分で動かせるか
これらを切り分けて評価できるかが肝になります。
「正解のない問い」は属人化する問題
ただし、ここで詰む。
「正解のない問い」を投げても、
結局面接官が自分の納得で採点しがちだからです。
現実問題
- 正解がない
- 評価基準も固定できない
- 回答が多様すぎる
その中で、面接者が無意識にやっているのは、
「自分が納得できる答えかどうか」という内的基準による評価。
これは、
- 経験
- 思考の深さ
- 抽象化能力
- 構造理解力
がないと再現できない。
なのでこのままだと、
・面接官ガチャ
・評価軸ブレ
・効果検証不能
になります。
普遍化のコツ:答えではなく「操作」を採点する
ここで視点を一段上げます。
「正解のない問い」を
正解を探す問題として扱うから破綻する。
見るべきなのは答えではなく、
その人が思考をどう操作しているか、
つまり、
見るべきは答えではなく、思考の操作といえます。
操作とは具体的に:
- どこに問題を置いたか
- 何を前提にしたか
- どこを固定し、どこを可変にしたか
- 感情と構造を分けたか
- 判断不能な部分をどう扱ったか
これは、結果ではなくプロセス(操作)。
この操作に採点軸を固定すると、面接はかなり再現性が上がります。
「評価軸がずれない」設計方法(重要)
普遍化するには、
評価を4つの観点に分解します。
① 問題設定の置き場所
- 事象をそのまま問題にしているか
- 構造に一段上げているか
▶︎ Yes / No で切れる
② 前提の自覚
- 前提を言語化しているか
- 暗黙の前提を疑っているか
▶︎ 発言内に「前提」「条件」「仮に」が出るか
③ 責任の所在の捉え方
- 誰が何を決める話かを区別できているか
- 感情と責任を混同していないか
▶︎ 他責 / 自責ではなく
「設計責任」「役割責任」が出てくるか
④ 不確実性の扱い方
- 分からない部分を分からないまま置けるか
- 仮説として切り出せるか
▶︎ 断定しすぎない
逃げない
保留できる
この4軸は、
- 業界非依存
- 職種非依存
- 知識非依存
で使えます。
しかも、
面接官が「賢い」必要はありません。
チェックリスト化できるからです。
面接官の能力を補助輪付きにする方法
ここが実務的に一番重要です。
やってはいけない設計
- 面接官に自由裁量を与える
- 感想ベース評価
- 「良さそう」「違和感」判定
やるべき設計
- 問いは固定
- 追質問も固定
- 評価は○×△のみ
- コメントは禁止(後工程で読む)
たとえば、
問い
「正解が分からない状況で判断した経験を教えてください」
追質問(固定)
- 何が分からなかったですか?
- そのとき、何を前提にしましたか?
- 誰が最終判断者でしたか?
- 今振り返ると、変えたい前提は何ですか?
評価項目
- 前提を言語化できたか(○×)
- 責任の所在を区別できたか(○×)
- 不確実性を仮説で扱えたか(○×)
これなら、
面接官は判定者であって
思考者である必要がない。
効果検証は「入社後」にやる
評価軸ズレの最大の誤解はここです。
採用は単発評価では検証できません。
- 入社後6ヶ月
- 判断を任せた場面
- トラブル時の動き
ここで、
- 思考の置き方
- 前提の扱い
- 判断の再現性
を同じ4軸で再評価する。
すると、
面接評価 ↔ 実務評価
が対応づけられます。
これで初めて、
「この物差しは使える/使えない」
が分かります。
- 正解のない問いは、扱い方を間違えると事故る
- しかし「思考操作」に評価軸を固定すれば普遍化できる
- 面接官の能力は不要にはできないが、依存度は下げられる
- 効果検証は必ず入社後とセットで設計する
つまり、
才能を見る採用ではなく
思考の置き方を測る測定器を作る
といえます。