通じないのは“知能差”ではなく、前提と置き場のズレかもしれない
「IQが違うと会話が通じない」
この言い回し、半分は当たっていて、半分は雑です。
原因をIQに押し込むと、改善も設計もできなくなるからです。
IQってそもそも何?
IQ は Intelligence Quotient(インテリジェンス・クォシェント) の略。
日本語だと「知能指数」ですが、ここが誤解を生みます。
IQは「賢さの総合点」ではなく、
同年代集団の中で、認知処理がどれくらい速く・正確かの相対指標にすぎません。
一般的には、
- 平均:100
- 標準偏差:15
- 正規分布に近い
という扱いになります。
Quotient は、比率・割り算の結果という意味で、IQは以下のように計算します。
IQ =(知能年齢 ÷ 実年齢)× 100
現在は統計処理されていますが、思想は同じく相対スコアになり、「年齢平均との差」と「集団内での位置」を見ています。
| IQ帯 | 人口割合(目安) | 一般的な特徴 |
|---|---|---|
| 145〜 | 約0.1% | 極めて高い抽象化・理論構築 |
| 130〜144 | 約2% | 高度な抽象思考・研究職向き |
| 120〜129 | 約7% | 複雑な概念処理が得意 |
| 110〜119 | 約16% | 学習・理解がかなり速い |
| 90〜109 | 約50% | 平均〜やや高め |
| 80〜89 | 約16% | 実務は問題なし |
| 70〜79 | 約7% | 学習に支援が必要な場合あり |
| 〜69 | 約2% | 知的障害領域 |
原則に戻るとよくあるIQの誤解も解消します。
- ❌ IQが高い = 人生がうまくいく→ 全く別問題
- ❌ IQが低い = 考えられない→ 誤り
- ❌ IQは才能の総合点→ 違う
IQが見ているのは「思考のエンジン性能」
IQテストが測っているのは、ざっくり4系統。
- 情報処理速度
- 作業記憶(同時に扱える作業量・一時保持力)
- 言語理解(抽象化・類推能力・記号の意味処理)
- 知覚推理(パターン・関係性)
つまり、 「速く・正確に・多くの情報を処理できるか」、エンジンの馬力や燃費みたいなものです。
ここで重要なのは、IQは
「どこに思考を置くか」ではなく
「置いた後、どれだけ上手く処理できるか」
を測っているという点です。
IQが見ていないのが「思考の置き場」
一方でIQが見ていないものが、思考の置き場所
- 何に関心を向けるか
- どこを問題として切り出すか
- 前提を疑うか
- 判断の責任をどこに置くか
- 感情との付き合い方
同じエンジンでも、どの道路を走るかで到達地点は変わります。
会話も同じです。
「IQ差=通じない」はどこまで本当?
起きていることを分解するとこう。
- IQ差が大きい → 処理速度・抽象度の差が出やすい
- でも“通じない”原因の多くは → 前提・関心・評価軸のズレ
例えば、
- IQ130同士でも、目的や責任の置き方が違えば噛み合わない
- IQ100と120でも、置き場が揃えば普通に通じる
ということが起きます。
「地頭が良い」とIQの関係
日常で言う「地頭が良い」は、IQより少し広い概念で、IQを含む複数の要素が混ざっています。
- IQ的処理能力:情報処理の「速さ・精度」
- 思考の置き場所(前提・構造・抽象度):何を前提に、どのレイヤーで考えているか
- メタ認知:自分の思考を眺める力
- 経験の構造化
よくある共通点は、
- 問題の置き場を適切に選べる
- そもそも「何が問題か」を定義し直せる
- 情報を「事実/解釈/感情」に分解できる
- 前提を疑うことに抵抗がない
つまり、
思考を置く場所をズラせる柔軟性
ここで初めて、IQ(エンジン)と「置き場」(運転)が接続します。
会話が噛み合わない本当の原因
会話が噛み合わないとき、いきなり「IQの差だ」で終わらせると、
だいたい思考停止になります。
チェックすべき順番はこれ。
- いま何を問題として話している?(置き場)
- 前提は揃ってる?(条件)
- 評価軸は同じ?(何が“良い”か)
- それでも差が出るなら、処理速度や抽象度(エンジン)
この順番で見れば、
通じない問題はだいたい改善可能な現象になります。
実例で考えてみよう
一般に「地頭が良い」と言われる人と話していると、
話が早く、ズレが少なく、無駄な衝突が起きにくいと感じることがあります。
これは単に IQが高いから ではありません。
一般に「地頭が良い」と言われる人の多くは以下の掛け算だからです。
- IQが高め(だいたい110以上が多い)
- かつ
思考の置き場を動かす経験を積んでいる
逆に言うと、
IQが高くても、正解が用意された環境(学校・大企業など)だけで育った場合、
思考の置き場が固定されやすく、実務や判断の場面で詰まりやすくなります。
その結果として起きるのが、
いわゆる「話が通じない」という感覚です。
高IQでも、以下の場合、思考は簡単に瞑想します。
- 問題設定がズレている
- 前提を疑わない
- 感情や立場に思考を縛られている
「前提が違うと話が通じない」と言われる理由も、ここにあります。
正確には、
前提が違うこと自体が問題なのではありません。
問題なのは、
自分の前提を前提だと認識していないことです。
思考の置き場が違う人同士では、
互いに「事実」を語っているつもりでも、
実際には「前提」をぶつけ合っているだけ、という状況が起きます。
これは能力差ではなく、
視点が固定されているかどうかの違いです。
思考の置き場はレイヤーで考えよう
思考の置き場は「能力」ではなく、次元であり、いくつかのレイヤーがあります。
最も表層にあるのが、
「何をしたか/していないか」「頑張ったかどうか」といった
行動や努力のレイヤーです。
- 何をしたか/していないか
- 頑張った/サボった
- 性格・根性の話になりやすい
ここでは性格論や根性論になりやすく、衝突が起きやすくなります。
次に、
やり方やノウハウを比較するレイヤーがあります。
- やり方が合っているか
- 方法の比較
- 正解探し
ここは正解探しに陥りやすく、情報過多になりがちです。
さらに一段上には、
「なぜその方法が必要になったのか」という
構造や前提を考えるレイヤーがあります。
- なぜその方法が必要になったのか
- 条件・環境・役割設計
- 再現性の有無
条件や環境、役割設計、再現性を扱う思考です。
その上には、
「何を成功と定義しているのか」
「その判断基準は誰の価値観か」
といった視点・評価軸のレイヤーがあります。
- 何を成功と定義しているか
- その判断基準はどこから来たか
- 誰の価値観か
そして最も抽象度が高いのが、
「なぜ自分はそう考えたのか」
思考の癖や感情、無意識の前提そのものを扱うメタレイヤーです。
- なぜそう考えたのか
- 思考の癖・感情の影響
- 無意識の前提
多くの人が高いレイヤーには達しないので、レイヤーの境目で会話が通じない問題が起こります。
思考を上げるためにIQは必要か?
では、思考の置き場を上げるためにIQは必要なのでしょうか。
結論から言えば、
最低限のIQは必要ですが、高IQ=高次元思考ではありません。
上位のレイヤーほど、
抽象化・同時処理・因果分解といった処理能力が求められます。
そのため、一定のIQは確かに必要です。
しかし一方で、
感情や立場、刷り込みに思考を縛られていると、
高IQであっても思考の置き場は簡単に低いレイヤーに留まります。